子ども、ご利用者・ご家族、社員、同業異業種の経営者、関係機関などの”インクルーシブ”な来場者が感動した創業11周年記念講演の秘密とは?【株式会社インクルージョングループ代表 藤田直インタビュー(その1)】

「創業〇周年記念式典」を開催する会社の経営者が最も伝えたいこと。それは、「これまでお世話になってきた方々」への感謝の気持ちではないだろうか?

福祉業界で、障がい・保育・介護の3事業を行いながら、550社以上を超える企業・事業所への経営支援も行なってきた株式会社インクルージョングループ。その代表の藤田直(なおき)社長もまさにそう思っていた。

「創業11周年を迎えられたのは、お一人お一人の存在があったから」

その感謝の想いを胸に、昨年2024年5月に創業11周年式典を開催。

その会場には、総勢500名の「インクルーシブ」な方々が参加していた。例えば、インクルージョンが経営する保育園の園児、放課後デイサービスの児童・生徒、就労支援事業所の利用者とそのご家族とスタッフ、同業・異業種で活躍されている経営者、社員、フリーランスなど。

藤田社長の講演を聞いた方々は、年齢や立場を超え、「感動した!」という感想が次々と届いた。一体、藤田社長はどんな想いで準備し、本番に臨んだのか?その裏側に迫ってみた。(取材日:2025年1月吉日)

年齢・立場関係なく、感動が生まれた講演の秘密

取材班:あらためて創業11周年おめでとうございます。総勢500名が参加された式典でしたが、開催する目的は何だったのでしょうか?

藤田:感謝を伝えたかったからです。僕は「創業〇周年」とか嫌いなんです。スタッフや関係者にわざわざお時間を頂戴するなど負荷がかかるのもよろしくないと思ってましたから、「5周年」もやりませんでした。でも、振り返ってみたら10年以上インクルージョンを支えていただいてきた。これまでご縁のあった方々や社員にとにかく感謝を伝えたかったんです。それが一番大きな目的です。

取材班:11周年記念式典当日は、様々な年齢・立場の方々が参加されていました。講演のテーマを絞り込むのは難しかったのではないでしょうか?

藤田:難しかったですね・・・。みなさん普段、考えていることやされていることが全然違うので。「共通のテーマ」を決めるのは非常に難しかったです。

取材班:藤田社長の講演に対して、立場を超えて「感動した」という感想が届いたようですね。例えば、経営されている放課後等デイサービスの利用児が「藤田社長のような社長になりたい!」という声もあったそうで。

取材班:あと、「インクルージョンに通所していることが誇らしいです」という言葉が利用者さんからもあったようですね。それを聞いた社員さんが「嬉しかった」と話されていたり。立場を超えて「感動」が生まれる講演をする上で、何を一番意識されていたんですか?

藤田:もちろん、小さなお子さんにもわかりやすい言葉を使うのは前提ですが、まず「感謝の気持ちを素直に出す」という心構えが大事だと思います。ここまでやってこられたのは僕一人の力じゃない。この機会だからこそ、しっかり感謝をお伝えしたかったんです。

取材班:講演内容は、福祉業界で働き始めた「経験値0」の状態から現在までを失敗談も含めて「赤裸々」に話されていたことが印象的でした。現在の藤田社長は300人以上の社員がいるグループの代表であり、一般社団法人全国介護事業者連盟 障害福祉事業部会役員及び障害福祉事業部会大阪府支部 支部長も努めておられますが、これまでの軌跡は初めて聞く人の方が多かったのではないでしょうか?

介事連障がい福祉事業部会大阪支部設立総会時

藤田:テクニックに走りすぎた会社経営で、創業からの幹部が離れていった出来事とか、うまくいかなかったことも赤裸々に話しましたね。うまくいかない時に支えてくださった方々や、ご縁があった方々が、会場にお越しいただいてましたから。

取材班:そうした藤田社長の人としての「在り方」が見えた講演内容でした。実績が出ている「現在」だけの話だけをしても、「この人はすごい人だからできたのでは?」で終わってしまう。でも、「経験値0」からここまで「挑戦」して乗り越えてこられたそのストーリーに自分を重ねやすく、刺さったのではないかと。だから児童も「藤田社長みたいになりたい。自分もできるかも!」と「希望」を感じたのではないでしょうか。今、何かを始めたばかりの人も希望を感じる内容だったと思います。

藤田:そう思ってもらえると嬉しいですね。シンプルに「俺なんかでもできたんやから、全然できるよ」っていう話なので。講演のテーマは、「挑戦」。裏テーマとしては、2024年12月に出版させていただいた書籍でもお伝えしている「在り方」でした。

「在り方」は伝えるものでなく、伝わるもの

取材班:「在り方」を伝えることってすごく難しいと思うんです。「良いことだけ」を伝えるんじゃなく、「苦難・困難」にぶつかった時の「未熟な自分」も伝えないといけないと思うのですが?

藤田:確かにそうです。難しいからこそ、自分自身の「在り方」を投げかけてみることにしたんです。大阪市鶴見区で介護事業を経営している金児さん(株式会社familink代表)からの感想で印象に残ってるのが、「藤田社長は、かつて幹部が離れていってしんどい時期に、そう感じさせずに接してくれていた。自分がしんどいのに常に周りを気にかけていたのは本当にすごいこと。当時を思い返しながら講演を聞いていたら涙が止まらなかった」と言っていただいたんです。

famikink代表の金児さんと。2025年3月3日に多世代交流拠点R∞P(ループ)オープン!

取材班:それは、「苦難・困難」にぶつかった時の話や「未熟な自分」を伝えたからこそ、伝わったことですよね。「実はそうだったんだー!」って。

藤田:10年続く会社の生存率は6%台と言われている中、社会に対する「想い」と、マーケティングなどの「戦略」は両輪だと思います。でも、それらを支えているのは経営者の「在り方」なんですね。

藤田:「在り方」は、普段から人に対する接し方・向き合い方がしっかりできてないと機能しないんです。経営支援をする中でも、ここを意識してクライアントに向き合わないといけないんですね。フィードバックする際に、自分ができてないことは伝わらないんですよ。2024年は、11周年式典と、「在り方」をテーマにした書籍の出版、クラウドファンディングに挑戦したことで、あらためて「在り方」を意識し直した年でもありました。会社をあげての挑戦を支えていただけたことに、めちゃくちゃ感謝しています。すごくパワーを使ってもらったと思います。

取材班:「在り方」は「伝えるもの」というよりも「伝わるもの」ということでしょうか?

藤田:そう思います。例えば、「挑戦する在り方」の場合でいうと、チャンスはいつでも目の前にあるんです。日頃から行動したりチャレンジしているからこそ、「あの人って挑戦者だよね!」と伝わるじゃないですか。そして、行動する源泉は「想い」なんじゃないかなと。そう言ったことを、直接的に伝えずに伝わったら嬉しいと思っていました。

11周年式典全体についての振り返り

式典開始前

藤田:あと、せっかくの11周年の機会なので「インクルージョンの力」をお披露目したかった気持ちもありました。「力」というのは、僕だけが歩んでやってきただけじゃなくて、会社としての「力」なので。みんなの「力」のおかげで、誇れる式典ができました。逆に、スタッフや利用者さん、そしてご家族には、「インクルージョンは、こんなにたくさんの人に集まってもらえる会社なんだ」と規模感を含めて見ていただくことで、実はどういう位置にいたのか、どんな人たちに支えてもらっていたのかを実感して欲しかったんですね。これも大事なテーマだと思っています。

取材班:「軽いノリで来たパーティーなのに、こんなにたくさんの人が集まってこんなに大盛況で、厳かな会だとは思いませんでした」と驚いておられた方もいたそうですね。

藤田:本当に嬉しかったです。あ、今井絵里子さんが来られなかったのは残念でした。ビデオレターはいただきましたが、SPEED世代が多かったので、みなさんをがっかりさせてしまって申し訳なかったです。

取材班:会場に気まずい空気が流れましたね(笑)

藤田:詐欺と言われてもおかしくないですよね。出版記念講演会でもあるのに書籍出版がこの日に間に合ってないし、今井絵里子さん来るからおいでいうて来ぇへん…。「藤田さん、嘘ばっかりやん、帰りますわこんなんやったら!!!」っていう人が出てもおかしくない・・・。

だがしかし!!

みんなが分かってくれて、笑って許してくれたのは本当に感謝でしかないです。

取材班:他に、印象に残ってるところはありますか?

藤田:お花も嬉しかったです。このような式典をされる際、僕もお花を贈ったりしますが、「お祝いを持って行かなアカンかな」とか「お花贈った方が良いかな」などお気持ちは嬉しいですが、気を遣わせるのは恐縮なので、一律にお断りをさせていただいてました。にも関わらず、お花など贈ってくださる方がいて……やはり、いただくと嬉しいもんですよね。

橋本恵さん(株式会社まほろば代表)は、特注のバルーンを贈ってくださり、撮影の映えスポットになりましたし、社会福祉法人慶生会 理事長 永井正史さん、理事の杉岡正功さんからも、それぞれとても大きく綺麗な檜の造花をいただきました。(今でも、本社に飾らせていただいています)

社会福祉法人慶生会 永井正史 理事長 杉岡正功 理事より

取材班:「会場にお花を送るとご迷惑かもしれないので」ということでインクルージョン本社に届けてくださった方もおられたようですね。

藤田:そうなんです、坂東さん(株式会社さくら代表)の胡蝶蘭も綺麗でしたね。また、後日に開催させていただいた2回目の出版記念講演会にもお越しいただき、特注の大きなサプライズケーキまでプレゼントしてくださいました。本当に嬉しかったですね、ありがとうございました。

取材班:今お話しいただいたのは、錚々たるメンバーのお話ですけれども、11周年を迎えるにあたり、懐かしい方との再会や起業前にお世話になった方などのご参加はありましたか?

藤田:大学時代からの悪友が嬉しそうに駆け付けてくれました。実は6年前に開催した1回目の出版記念講演会にも彼らは来てくれてたんです。その時は、頼んでもないのに受付も手伝ってくれて、本当に友達に支えてもらっています。そして離れていった幹部のうち1人が駆け付けてくれました。当時を知る人が、元幹部が参加しているのを見て、とても驚いたようです。まぁ、そんな光景もイイじゃないですかね。

そして、秘書の長岡が用意してくれた二次会のサプライズで、錚々たるメンバーが登壇して「藤田を斬る」ような企画もありました。そこで本当に仲の良い友人、名だたる経営者、そして一般社団法人全国介護事業者連盟の中川会長まで、とにかく素晴らしいメンバーが僕のことを楽しく最高の笑顔でいじってくれた。

藤田:まさにインクルーシブで、いろんな立場の人が混ざり合ってお話していただいて本当に嬉しかったです。なにより、日頃から良くも悪くも一番近くで僕の「口撃」を直下に受けている長岡が、水面下で僕のために名だたる方に声をかけて交渉しながらあの空気を創りあげてくれた。長岡の行動力と優しさ、そして外部の方からも長岡をとても高く評価していただいたことがなによりとても嬉しかったです。

〜今回はここまで!〜

取材班:引き続き、今回のお話の中でも少し出た、「10年以上続く福祉事業経営」に必要だったことについてインタビューさせていただきます。

・これからどんな経営者・人材が活躍できるのか?必要なのか?
・インクルージョンが求める人材 など

についてお聞きしていきます。

次回もお楽しみに!!

【次回の藤田社長インタビュー記事】
経営経験0の状態から11年の福祉事業経営に必要だったことと、これから共に働いていきたい仲間とは?